日比谷ステーション法律事務所 HIBIYA STATION LAW OFFICE

労働法務の基礎知識

セクハラに関し雇用管理上講ずべき措置の指針の詳細と解説

厚生労働大臣が、男女雇用機会均等法(正式法令名「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」)11条2項に基づき定める「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年厚労省告示615号)には、事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき措置の内容が具体例とともに、次のように規定されています。
なお、事業主が職場におけるセクハラに関し雇用管理上講ずべき措置の内容は多岐に渉るため、具体的にかかる措置を講じる際には顧問弁護士に事前に相談することが望まれます。

1. 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

(1) 職場におけるセクハラの内容及び職場におけるセクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、上記方針を規定し、上記内容と併せ、労働者に周知・啓発すること。
  • 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に上記内容及び上記方針を記載し、配布等すること。
  • 上記内容及び上記方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。

(2) 職場におけるセクハラに係る性的な言動の行為者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、職場におけるセクハラに係る性的な言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。
  • 職場におけるセクハラに係る性的な言動を行った者は、現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発すること。

※ この点に関しては、山口地裁下関支部平成16年2月24日判決が参考になります。ある会社の女性職員が同僚や上司からセクハラ行為を受け、会社がその事実を認識したにもかかわらず、“社内会議の場を利用して出席者にパンフレット等を配付し一般的な注意を与えるなど通り一遍の措置を取ったにすぎ”ないとして、会社の責任も認定された事例です。

<判決要旨>
使用者は、従業員に対し、良好な職場環境を整備すべき法的義務を負うのであり、セクハラの防止に関しても、職場における対処方針を明確化し、これを周知徹底するべく種々の具体的な啓発活動を行うなど、適切な措置を講じることが要請されるのであって、こうした義務違反によって、従業員を対象としたセクハラを招いた場合、使用者自ら従業員に対する不法行為責任を免れないと解される。
そして、被告会社は、公的機関(山口労働局雇用均等室)から社内のセクハラの存在を示唆されるなど、いわば危急の事態を迎えていながら、その後、社内会議の場を利用して、出席者にパンフレット等を配付し一般的な注意を与えるなど通り一遍の措置を取ったにすぎず、その出席者である被告Aにおいて、数か月のうちに露骨なセクハラを繰り返す事態を招き、或いは被告Bにあっても、同会議のわずか1か月後に公共の場で性的な誹謗中傷に及んでおり、被告会社の対応は、何らこうした明白な不法行為の歯止めとなり得ていない。両名は、本件の応訴態度に鑑み、その当時、自身らの行為がセクハラとして違法の評価を受けることの認識すら有していなかったものと推認され、職場を共にする異性への配慮に乏しい常況にあった可能性もあり、いずれも使用者を補佐すべき管理職の地位にあったことを考慮すると、本件セクハラの被害を両名の個人的所為のみに帰するのは相当でなく、被告会社の不作為や社内啓発の不十分さがその一因となったものと解すべきである。
したがって、被告会社には、良好な職場環境の整備に係る義務違反があり、原告に対し不法行為責任を負う。

2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

(3) 相談窓口をあらかじめ定めること。

  • 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。
  • 相談に対応するための制度を設けること。
  • 外部の機関に相談への対応を委託すること。

※ 「相談窓口をあらかじめ定める」とは、窓口を形式的に設けるだけでは足りず、実質的に対応可能な窓口が設けられていることをいいます。そのためには、労働者が利用しやすい体制を整備するとともに、労働者に周知されていることが必要です。

(4) 相談窓口担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、相談窓口においては、職場におけるセクハラが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるセクハラに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。

  • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
  • 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。

※ 「内容や状況に応じ適切に対応する」とは、相談者や行為者などに対して、一律に何らかの対応をすることを指すものではありません。労働者が受けている性的言動などの性格・態様によって、状況を注意深く見守る程度のものから、上司、同僚などを窓口を形式的に設けるだけでは足りず、実質的に対応可能な窓口が設けられていることをいいます。そのためには、労働者が利用しやすい体制を整備するとともに、労働者に周知されていることが必要です。

※ マニュアルに記載する「留意点」には、いわゆる「二次セクシュアルハラスメント(相談者が相談窓口の担当者の言動などによってさらに被害を受けること)」を防止するために必要な事項も含まれます。

3. 職場におけるセクハラに係る事後の迅速かつ適切な対応

(5) 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。

  • 相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び行為者とされる者の双方から事実関係を確認すること。また、相談者と行為者とされる者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。
  • 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合等において、雇用機会均等法第18条に基づく調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。

(6) 上記(5)により、職場におけるセクハラが生じた事実が確認ができた場合においては、行為者に対する措置及び被害者に対する措置をそれぞれ適正に行うこと。

  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における職場におけるセクハラに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。併せて事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復等の措置を講ずること。
  • 雇用機会均等法第18条に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を講ずること。

※ この点に関しては、横浜地裁平成16 年7月8日判決が参考になります。ある市の女性職員が直属の上司からセクハラ行為を受け、その加害者の責任だけではなく、相談窓口の課長の責任(不作為)も認定された事例です。

<事実の要約>
ある市の女性職員A(被害者)は、直属の上司B(加害者)からセクハラ行為を受けていた。そのことを相談担当窓口の課長Cに相談し、CはBに事情聴取などをしてセクハラ行為の事実を認識したにもかかわらず、何ら適切な対処方法をとらなかった。

<判決の要旨>
(Bの言動がセクハラ行為に該当する違法なものであることはもちろん)、相談担当窓口の課長Cについても、裁判所は“結局,C課長は,問題解決にとって特に重要な事実の調査・確定を十分行わず,当時同課長が把握していた事実によっても当然検討すべきであると考えられた被害者である原告Aの保護や加害者Bに対する制裁のいずれの点についても,何もしなかったと評するほかはない。C課長の不作為は,その権限及び職責を定めた本件基本方針及び本件要綱の趣旨・目的や,その権限・職責の性質等に照らし,その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くものというべきである。よって,同課長の権限不行使は,原告との関係において違法というべきである。”と判断しています。

(7) 改めて職場におけるセクハラに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。(職場におけるセクハラが生じた事実が確認できなかった場合も同様)

  • 職場におけるセクハラがあってはならない旨の方針及び職場におけるセクハラに係る性的な言動を行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等すること。
  • 労働者に対して職場におけるセクハラに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。

4. 上記1から3までの措置と併せて講ずべき措置

(8) 職場におけるセクハラに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該セクハラに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。

  • 相談者・行為者等のプライバシー保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、そのマニュアルに基づき対応するものとすること。
  • 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。
  • 相談窓口においては相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に掲載し、配布等すること。

(9) 労働者が職場におけるセクハラに関し相談したこと又は事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

  • 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、労働者が職場におけるセクハラに関し相談をしたこと、又は事実関係の確認に協力をしたこと等を理由として、その労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発すること。
  • 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に、労働者が職場におけるセクハラに関し相談をしたこと、又は事実関係の確認に協力したこと等を理由として、その労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布等すること。

参考資料

  • 「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年度厚生労働省告示第615号)
  • 「事業主の皆さん 職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!」(厚生労働省 都道府県労働局雇用均等室 平成22年11月作成パンフレットNo.13)

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